子育てでみられる3つの表情と笑顔!安心・達成感・新たな体験を大切に…

子育てコラム 

三つの表情
<安心の笑顔>
 多くの子どもたちとの出会いの中で、私には特に大切にしたい3 つの表情があります。一つ目は、お母さんを見つけて、うれしいとほっとするが混ざった安心の笑顔です。多くの赤ちゃんは、3ヶ月頃から誰があやしても笑顔を返し抱っこを喜んでくれますが、6~7 ヶ月になると、お母さんに抱っこされている時はニコニコしているのに、他の人が抱っこをすると火がついたように大泣きをする人見知りが始まります。はいはいができるようになると、いつもお母さんを求めて追いかけ、お母さんの姿を必死で捜す後追いも出てきます。お母さんを大切でよりどころと認識する力と、目の前にいなくても記憶する力が育ってきたことを示しています。
<達成感の笑顔>
 二つ目は、やりたいと思ったことを一生懸命練習してついにできるようになり、やった!できた!と喜ぶ達成感の笑顔です。欲しいものに手が届いた、歩けるようになった、おしっこが言えた、ボタンが留められたなど、毎日たくさん見られます。簡単でなく努力をしたほど喜びは大きく、そばで一緒に喜んでくれる人がいるほど満足感が高まります。
<新たな体験に挑戦する決心の表情>
 三つ目は、新たな体験に挑戦する決意の表情です。一人で初めて買い物に行く子どもの興奮ぶりを移したテレビ番組「はじめてのおつかい」の出発場面に見られます。今まで大人と一緒に経験し大体はわかっているつもり。でも、失敗したらどうしよう。やってみたいと不安な気持ちが葛藤する中で、前向きな気持ちが勝った時に一歩が踏み出せます。最初は、あなたはできるよと応援してくれる人が必要です。そして、やり遂げた経験が、さらに新しいことに挑戦するエネルギーとなり、積み重なって自立への巣立ちとなるのです。
3つの表情とともに育った“しんちゃん”
 ここで、しんちゃんのお話をします。しんちゃんは、眠ってばかりいて手のかからない赤ちゃんでした。1歳過ぎて歩けるようになってから動きが激しくなり目が離せなくなりました。人より物に興味があり、お母さんがいなくても平気で、買い物はすぐ迷子になりました。3歳になっても意味のある言葉がなく、ミニカーを並べて遊ぶばかりでした。3歳児検診の時に保健師さんに発達外来の受診を勧められ、前任の小児科医から発達の遅れ(知能指数IQ48)を伴う自閉症と診断を受けました。親子で児童デイサービスに週に2回通って少人数のグループで療育の先生と一緒に楽しい経験をすることで、しんちゃんは急に言葉が増え、お母さんを求めるようになり安心の笑顔がたくさん出るようになりました。
 4歳の時IQ67で、みんなと一緒に活動するのは苦手なため、地域の幼稚園では加育の保育士さんについてもらいました。小学校入学時、IQは84と正常範囲になりましたが、先生が全体に話す内容を理解することが難しいため、特別支援学級に就学しました。幼稚園と小学校低学年の時期に、自分の力でやり遂げる経験をして達成感の笑顔を積み重ね、落ち着いて聞いて考える力がついてきました。
 小学校3年生の時、IQは102と平均値を越し、特別支援学級の担任の先生から次の学年から普通学級に変わることを勧められましたが、しんちゃんは特別支援学級の方が安心と断りました。しかし、4年生になって、しんちゃんは友達と関わることが楽しくなり、普通学級に変わることを決心し、5年生からは少人数で守られた学級を離れ、30人学級の一因となりました。6年生の現在は、学校生活を意欲的に過ごすことができ、困ったことがあっても友達と相談しながら解決しているとのことで、私の定期的診療を終了しました。
 しんちゃんのお母さんは、子どもの発達や将来のことについていろいろ悩みました。しんちゃんの育ちを応援してくれる保健師、児童デイ、幼稚園、学校、医師の人たちとじっくり話をして、しんちゃんの気持ち、つまり大切な表情を引き出せるのはどれがを考えて進路を選んできました。安心して自ら進んでいく生きる力をつけることで、結果的にIQが上がり普通学級に行くことになりました。これから先の人生も、いろいろな試練があるはずですが、しんちゃんとお母さんはその都度、周りの人たちと協力して解決していくことでしょう。このように地域の中で子どもの大切な表情が続くよう願っています。


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